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森博嗣「神様が殺してくれる」

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神様が殺してくれる神様が殺してくれる
森 博嗣

幻冬舎 2013-06-27


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 大学時代、主人公は美しすぎる男子・リオンとルームシェアをしていた。その後殺人事件にリオンが関わっているらしいと聞き、主人公は個人的に調査を始めるが…。

 序盤の雰囲気はすごく良くて期待したのだが、ミステリとしていえば、読後感はズコー!のひとことに尽きる。
 全てがわかってから思い返せば、


…ここから内容に少し触れるので、未読の方はUターンを。


…これは、あれだ。不実な一人称語り。
 DNAの謎も、なぜリオンに「神」と呼ばれたのかも、主人公がアッパッパーでなければ謎など一つもなく、真犯人など瞬時に即座に判明したはずのものを、わざと事実を隠しているから不思議に思えただけだという、ね。
 主人公はザーラを愛するあまり、妻に消えてほしくてワザと気付かぬ無能のふりをして破滅に追い込んだのでは、と邪推してしまうほど。
 ミステリーにはそういう、騙りで騙すものはジャンルとしてアリだけれど、本作はアンフェアすれすれ(私的にはアンフェア)の語りであり、読後釈然としない嫌な気持ちで胸がいっぱいになる。

 あと本作は、首藤瓜於の某作もそうなのだが、身体的な悩みを抱えた人を不気味で理解の及ばない怪物殺人鬼として描いているような、そこが気に入らない。私には本書から真犯人の動機がピンと来なかった(美しすぎるからジェラシーを超えて愛してしまう?)ため、ラストは唐突でしかなかった。

 主人公がしっかりしていれば、幾つもの事件や人命損失の悲劇が未然に防げたはずなのに、のうのうとザーラに自分をわかってほしいとか、主人公の厚顔無恥さが鼻につき、許容できない小説であった。




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