Quantcast
Channel: 読書日記PNU屋
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2027

籠三蔵「方違異談 現代雨月物語」

$
0
0

 

 

「高崎怪談会」で、ひときわ異彩を放っていた著者、待望の単著。


 通常の怪談作品においては、怪異は描写されるとそこで終わり、因縁が説明されることはあれど、作中で決着が付けられるのは稀だ。しかし、本書では心霊や妖魔のカウンターとして霊能者や神仏が登場する。


 怪異を書くにあたって、頼れる先があることは、まっこと羨ましいことである。

 この世ならざる者と語らい、在るものとして付き合うスタンスは郷内心瞳による拝み屋シリーズに近い雰囲気かも?


 私的お気に入りを下記に。


スコップ/こんな怪異と呼ぶには神々しすぎる超常現象なら、一度体験してみたいかも(前半に限り)。


ジョギング/ツイていたモノだったのか、それとも彼女こそが…?


約束/ええ話や…。


式神/百年前の人が気になる!


ハルちゃん/究極のプラトニック愛。手塚治虫「雨ふり小僧」好きならハートにきゅんとくること請け合いだ。


黒蟠虫/怪談収集における理想的な心構えが書かれており、実話怪談を集め、書いてみたい方は必読かと。


怪異のピースがピタリ合うさまは、おぞましくも美しい。


そして最終話、何気なく読んできた話がずしりと質量を持ち始め、肩にのしかかるようなざらついた質感が素晴らしい。


微笑ましい序盤からクレッシェンドで禍々しくなりゆく、異形の一冊である。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 2027

Trending Articles