「高崎怪談会」で、ひときわ異彩を放っていた著者、待望の単著。
通常の怪談作品においては、怪異は描写されるとそこで終わり、因縁が説明されることはあれど、作中で決着が付けられるのは稀だ。しかし、本書では心霊や妖魔のカウンターとして霊能者や神仏が登場する。
怪異を書くにあたって、頼れる先があることは、まっこと羨ましいことである。
この世ならざる者と語らい、在るものとして付き合うスタンスは郷内心瞳による拝み屋シリーズに近い雰囲気かも?
私的お気に入りを下記に。
スコップ/こんな怪異と呼ぶには神々しすぎる超常現象なら、一度体験してみたいかも(前半に限り)。
ジョギング/ツイていたモノだったのか、それとも彼女こそが…?
約束/ええ話や…。
式神/百年前の人が気になる!
ハルちゃん/究極のプラトニック愛。手塚治虫「雨ふり小僧」好きならハートにきゅんとくること請け合いだ。
黒蟠虫/怪談収集における理想的な心構えが書かれており、実話怪談を集め、書いてみたい方は必読かと。
怪異のピースがピタリ合うさまは、おぞましくも美しい。
そして最終話、何気なく読んできた話がずしりと質量を持ち始め、肩にのしかかるようなざらついた質感が素晴らしい。
微笑ましい序盤からクレッシェンドで禍々しくなりゆく、異形の一冊である。