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吉村龍一「光る牙」

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光る牙光る牙
吉村 龍一

講談社 2013-03-07


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 先輩と共に山岳遭難者救助に向かった樋口は、惨殺された遺体を見つける。熊害を通して人と自然の関わりを描く小説。

 よく調べて書かれたのか、著者は元自衛官だそうなので自家薬篭中のものなのか、登山およびレスキューの知識と描写が非常にしっかりしていた。
 たよりない樋口の成長小説として読めば感動可能なものの、熊害小説としてはあまり楽しめなかった。

 私的に昔読んだ飯森広一の熊害作品(手元にないのでわからないが、漫画「北国の帝王」か?)が素晴らしすぎたせいか、本書にはあれ以上の衝撃は感じなかったのだ(本書の新味として、違法な罠を仕掛けるマナー知らずなハンターに言及したのは良かったけれども)。

 また、熊を●毛にする意味はあったのかと思う。そのせいで、妙に●毛熊の神聖視と擬人化が進んでしまい、フィクション臭が強くなって、本来なら緊迫し盛り上がるはずのラスト(人熊との戦い)が、どうもしらけてしまった。
 ▲けたから●毛と知られず良かったろう、と熊の心情をウェットにヒューマンライクに想像するところなど、もういけない。
 ここは普通に黒毛か、それこそ飯森作品のように、金毛の羆で良かったのにと思う。

 あとは少し(私の読解力のせいかもしれないが)わかりにくいところがあって、先輩は落ちて(?)から、どうやって車まで戻ったのか?など、位置関係がつかめなかった。







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