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恩田陸「夜の底は柔らかな幻」

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夜の底は柔らかな幻 上夜の底は柔らかな幻 上
恩田 陸

文藝春秋 2013-01-12


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 在色者の実邦は、決意を抱いて故郷の途鎖へ潜入する。超感覚をありありと描写するサイキック・ファンタジー。

 詳しい用語説明が(故意に)されないため、読者もそろそろと手探りで読んでいくことに。いきなり緊迫感漂う冒頭のツカミは完璧で、なんと凄い、なんと面白い小説があるものかと半ば感激し、半ば才能の輝きに打ちのめされながら、夢中でページを繰った。


夜の底は柔らかな幻 下夜の底は柔らかな幻 下
恩田 陸

文藝春秋 2013-01-12


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 …だが、しかし。
 恩田陸の小説は、途中までなら世界一面白くてワクワクするのだ。画竜点睛を欠くのは、ラストである。
 いまだ人が見たことのない世界を描写するのだから、多少抽象的になるのは仕方ないが、ヒロインと敵対していた某キャラの関係、これはないだろうと思わざるを得ない。二人の間には、死が重なりすぎているではないか!
 超能力バトルが迫力だっただけに、この結末はなんとも納得がいかず、もったいないと思うのだ。

 特殊能力を体感しているかに錯覚させる 描写は日本一と思うだけに、それに見合うカタルシスあるラストを読みたかった。


p.s.男女を問わず、主要登場人物のほぼ全員が喫煙者なのは、少し引っ掛かりを覚えたなあ、タバコが嫌いなもんで…在色者はタバコを吸うと精神が麻痺して安定する、みたいなウラ設定でもあったのかしら。
 あと、一カ所〈存色者〉になっていたんだけど、新能力じゃなくて誤植だよね…??





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