![]() | 64(ロクヨン) 横山 秀夫 文藝春秋 2012-10-26 65 Amazonで詳しく見る |
刑事から広報に異動した三上は、記者と警察上司との軋轢、娘の失踪に苦しみぬいていた…警察組織に生きる男を描くサスペンス。
新聞記者と広報とのやりとりが非常にストレスフルで、前半読むのを止めたくなるほどだった。
三上は立ち位置に悩むところがリアル。その結果、彼の選ぶ道は人として真っ直ぐであろうとするもので、そこには共感できた。
気になるのは、女性キャラクター。三上夫人にしろ部下にしろ、一途で古風で頑固者と、タイプが被っているのだ。夫人はともかく、今どき、こんな若者はいるだろうか…と思ってしまう。
ラストはタイトルの意味が明らかにされる。
こここそがサプライズであり肝なのだが、人の記憶をそこまで信じられるものだろうか。それこそ、たいへんな努力をしたあの人に、常人を越えた記憶力があるのでもないと、このストーリーは成立しない。
そこを信じられるかどうかで、本書の読後感は変わってくると思う。
p.s.主人公・三上は家出した娘の歯科記録提出を頑なに拒む。その理由は、〈娘が生きていると信じたい/歯形などの情報を提出すると、娘の死体を探しているようで嫌だ〉と言うのだが、いちいち年齢の合う死体が見つかるたびに確認に行く妻のことを考えたら、歯科治療記録を出す方が合理的ではないか?!
三上は広報とはいえ現役警官だからいいとしても、妻は元婦警で、イタズラだと思うのが普通の無言電話を即娘からだと信じるほど、神経が参ってしまっている。個人データさえあったなら、死体を保管している現場も条件と合わぬ死体を除外できるし、三上だって公務をドタキャンしてまで無駄足踏ますに済むわけだろう、これを親心で美化するのは、愚かだよ。
あと、醜形恐怖は美人さんの方が多いらしいよ。美しいからこそ、ちょっとした造作が許せなくなるんだとかで。