![]() | 沈黙の町で 奥田英朗 朝日新聞出版 2013-02-07 Amazonで詳しく見る |
田舎町の豪商の息子が、通っている中学校で転落死しているのが発見される。いじめ犯人と目されるクラスメートは彼に何をしたのか? いじめサスペンス。
連載の時系列知らないんで、シンクロニシティなのかなと思うが、クラスで浮いてる変人男子転落死→事故自殺いじめで世間騒ぐ→遺族と生徒の感情激揺れという発端は宮部みゆき「ソロモンの偽証」に激似。「ソロモン」は中学生に自主性があり調査に手を出すのに対し、本作における中学生はイマドキらしく非常に軟弱。事件は検察と警察が暴いていくことになる。途中経過こそは違えど、真相のガッカリ感(殺された子の真実)も同じ。
閉鎖的な田舎という設定なのに、加害者・被害者家族が顔を合わせるのはわすかに一度。それって、そんなに否かじゃないんじゃないか。新聞の掲載事情にはやや地域色を感じたが、否かの閉鎖感が全然出ていない。本当に閉鎖的なイナカって、町にスーパーは一つしかなくて住民全員否応なしにそこでモノを買うしかなく、通りすがりの婆すら、どこの家の娘がいつ生理になったか知っているような、私の出身地N町のようにキモイ町だと思うのだが。
本書が面白いと思えなかった理由は、主に3点。
ネタバレ含むので、未読の方は注意。
・ラストの断ち切れ感
まるでブンガクのような、途中経過でプツンと切れる終わり方。エンタメとしてはなんだかなあ…。
・真相のしょぼさ
えーっ、こんだけ?と。中学生の身勝手で真相が隠されていただけで、魅力的でも衝撃的でもない。なぜそれっぽっちのことを、彼らは隠し続けたのだろう。謎だ。要するに、容疑者が口下手すぎて他人に意志疎通できないだけだったとは、なんともはや。謎でもなんでもなかった。
・キャラクター造形
いじめられっ子には、いじめられるだけの正当な理由があるという主張が声高になされるのだが、クラスのエースでも誰でも、ふとしたことでイジメられっ子になるというのはある。その点本書を読んでいると、死んでもしょうがない子みたいで、ちょっと極端な描写かと思う。
非のある人物だからいじめられたとするより、少し目立っただけで標的になる方が、怖いしリアルなんじゃないかなあ。
あくまでこの三点は私の感想だけど、まあこういう理由で楽しめなかった、という記録。