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畠中恵「さくら聖、咲く」

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さくら聖・咲くさくら聖・咲く
畠中 恵

実業之日本社 2012-08-18


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 佐倉聖の事件簿2、とあるので佐倉聖って誰だっけ? と思ったが、ググったら「アコギなのかリッパなのか」(#)の主役だった。異母弟の面倒を見つつ、政治家秘書っぽいアルバイトをしている青年である。

 本書は、そんな勤労青年・聖の就職活動物語だ。
 結論から言うと、私は本書に全く共感できなかった。畠中作品にはありがちなことに(例「しゃばけ」シリーズの若だんな等)、若い主人公は、複数の年上の権力者から、よってたかって甘やかされる。

 今回、聖は有能だから可愛がられているのではあるが、彼は目をかけてもらっている政治家(や、OB)たちから幾つも就職の勧誘や内定をもらいながらも、コネはいやだとソッポを向くのである。

 青い鳥は間近にありながら、聖は自分のヤリタイコトだのカノウセイだのを探求せんがために、今までさんざんお世話になってきた(聖もお世話してきたとはいえ、対価として金銭を頂戴してるんだから、お世話になっているだろう)人の誘いを蹴る。誠に蒙古斑が青いというか、若気の至りとしか思えない。

 まあ、それだけなら私と聖の考え方が合わなかっただけで、彼の無謀を勇気ととらえる読者もあろうが、物語はさらにバカバカしくなる。


 まず、D社の面接。停電による中断時に聖は知人からの電話を受ける。中断時ゆえ携帯に出るのはまあいいとして、彼は、

 中断時で良かった、面接中だったらマナーモードが震えて集中できないところだった、

 などと考えるのである。あのー、聖君。面接中に、携帯電話の電源を切っておくのは常識ですよ?


 その後、A社から振られる件にしても、こんなバカな、公私混同する輩などいるのか?とあきれてしまうし、真木の恋愛体質も酷い。こんなに見境ないのは病的で、コメディにしても笑えず、カウンセリングを勧めたくなるほど。

 そんなわけで、就職先に恵まれるにもほどがありながら、ボクチンが自分で決めるんだモンと甘え腐っているようにしか見えず、この超就職氷河期バカにしてんのかと全然楽しめないどころか、読んでて腹が立ってきたことであった。

 著者のまったりホンワカは時代モノだから赦せたのであって、現代モノとは相性が良くない気がする。ロムニーくらい心に余裕のあるセレブにしかオススメできない本だ。


(#)シリーズ前作の方が、癖のあるキャラに振り回されつつも、まだ楽しめたかも…
アコギなのかリッパなのか: 佐倉聖の事件簿 (新潮文庫)
アコギなのかリッパなのか: 佐倉聖の事件簿 (新潮文庫)



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