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戸梶圭太「迷宮警視正 最後の秘境」

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最後の秘境 (徳間文庫)最後の秘境 (徳間文庫)
戸梶 圭太

徳間書店 2012-06-01


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 ドラキュラとみまごう容姿を持つ星乃神警視正たち一行は、通り魔を追って[あがりの町]と呼ばれる放射能に汚染された場所へ潜入する…シリーズ第二弾。

 舞台が福島であることから、ネットで騒然となった本作だが、読んでみれば平常営業のトカジ作品であった。つまり、トンデモで、ハチャメチャで、激安登場人物が血と排泄物のを垂れ流しながら這いずりまわるのだ(注:貴族の星乃神を除く)。実にいつも通り、相変わらずのトカジ小説である。福島を扱う意味はあったのか?!と疑問だったが、星乃神の演説こそが、著者の言いたいことなのだろう。

 あがりの町住民が下品にむさぼる有様は「さくらインテリーズ」(#1)の終盤にも似てどこか無機質な恐怖を感じさせる。そして、ここは好みが非常に分かれそうに思うが、フィストファックに執着する男を執拗に描写するところは、阿部和重「シンセミア」(#2)のようでもあった。
 
 これだけムチャクチャで、下品で汚らしいストーリーなのに、上品な星乃神にラストまとめられてしまうと、なんだかいい話を読んだかの如く錯覚させられる。

 バカバカしい、不謹慎だと怒ってしまう読者もあるだろうが、著者は日本の現状を憂え、痛烈な皮肉としてこの物語を書いたのではないか…そんなことを、考えさせられた。

 今回、感想に受け身表現が多いが、いろいろ規格外な作品のため、傍観者として遠巻きに眺めているしかなかったのである。
 いずれにせよ、シリーズ一巻の伏線もまだ残っており、シリーズはまだまだ続きそうだ。間中の苦労も、新たな仲間と共に、まだまだ続くのだろう。


(#1)さくらインテリーズ (ハヤカワ文庫 JA ト 6-1)
さくらインテリーズ (ハヤカワ文庫 JA ト 6-1)
 男たちの激安人生に密着するストーリーがやるせない。リアルかと思えばラストはいつも通り(?)にブッ飛んで、不思議な清涼感が。

(#2)シンセミア〈1〉 (朝日文庫)
シンセミア〈1〉 (朝日文庫)
 なんとも陰鬱な田舎町の閉塞感が良く出ているけれど、私は好みじゃなかったなあ。


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