![]() | 猫ノ眼時計 (幽明志怪) 津原 泰水 筑摩書房 2012-07-10 Amazonで詳しく見る |
伯爵と呼ばれる小説家と、お人好しな猿渡の奇妙な友情等を描く短編集。
「蘆屋家の崩壊」「ピカルディの薔薇」に続く幽明志怪シリーズとか。
「日高川」猿渡が昔組んでいたバンドの紅一点、アイダベルには特殊能力があるというが…。
猿渡が語る安珍清姫説、蛇は水属性なのになぜ火を使えるのか、というのは確かに目から鱗だった。先日読んだ「女と蛇」「女人蛇体」収録の挿し絵を見ると、蛇体のはずが角やカギ爪があったりするものなので、江戸のころは蛇と竜の区別が厳密ではなかったのかもしれない。
「玉響」退院したはずの男から失われる記憶、失われる存在。猿渡と友人の伊予田に何が起きたのか。
不可思議な事態を現実の範疇で納めるにはこの結末しかないため、少し真相は予見できてしまう。だが、読後残る友情の余韻は素晴らしい。
「城と山羊」「続・城と山羊」猿渡の故郷、瀬戸内。そこにある小島は悪魔の島と噂されていた。
消え、再び現れる城の秘密に幻想味が加わって、なんとも素敵な雰囲気。珍奇な料理描写も楽しい。
「猫ノ眼時計」猿渡が猫の目をのぞき込もうとしたとき、少年はなぜ止めたのか。
これはすごいな、不条理な設定が怖かった。猫の目から時刻がわかるとは知らなかった。飼っていないので猫には縁遠いが、今度野良猫にでも会ったなら、目を見てみたく思う。