![]() | ヒマラヤの風にのって 進行がん、余命3週間の作家が伝えたかったこと 吉村 達也 角川書店(角川グループパブリッシング) 2012-07-31 Amazonで詳しく見る |
推理作家は、自らの不調に気付いていた。しかし、長年ともに暮らした愛猫を看取るのを優先、氏猫を送りようやく受診したときには、末期がん余命三週間だった…ご本人と、ご家族および主治医と編集者による吉村達也ラストブック。
最初に。吉村達也先生のご冥福をお祈りいたします。
大好きだったな、朝比奈シリーズとか読みやすくて、次から次へと夢中になって読んでいたものだ。だんだん一冊が分厚くなっていき、それで読まなくなっていたのだ。だから、突然の訃報には驚いた。がんだったなんて、知らなかった。
本書は包み隠さず綴られる闘病の様子が、とても素敵である。そう、素敵なのである。つらくも厳しい治療に耐え、常に医療者に感謝の気持ちを忘れず、奥様とお嬢様とユーモアたっぷりの会話まで交わす著者の、飾らない姿が本当に素敵なのだ。良き作家であり、良き夫であり良き父であり、本当に愛し愛されていたことが、せつせつと文章から伝わってくる。
改めて、遺された著者の作品を読みたくなった。
p.s.愛猫ショコランの看病と、病院嫌いから受診が遅れたという記述を読んでやきもきしたが、写真を見て合点がいった。こんな可愛らしくて賢い生き物、自らの命を賭しても看取るだろう。