![]() | 太宰治集 哀蚊―文豪怪談傑作選 (ちくま文庫) 太宰 治 東 雅夫 筑摩書房 2009-08-10 Amazonで詳しく見る |
かの名高い文豪も、怪談を愛していた…本書はそんな、階段ファンに嬉しい事実から始まる。
とくに私の印象に残った話を下記に。
「尼」怪奇現象がとてもシュール。
「浦島さん」昔話の浦島太郎のラストに斬新な解釈をつけていて素敵だ。
「断崖の錯覚」作家を詐称した青年が犯した、重い罪。肥大した自尊心と現実とのギャップが悲劇を生む。
「雌に就いて」心中を描いているからだろうか、一種異様な雰囲気が漂う。
「女人訓戒」なぜ、人魚は雌しかいないのか…目から鱗の落ちる明快な論理。
「皮膚と心」女性にとっては、死よりも恐ろしい出来事かもしれない。
「メリイクリスマス」あまりにも鮮やかな、怪の登場に戦慄。「やあ、いる、いる。」と何も知らぬのんきな主人公である。
「トカトントン」心を奪う音についての物語。我が身に起こったら、と思うとこれほど恐ろしいことはないだろう。
「一つの約束」作家魂の高潔さを感じる。
太宰といえば「人間失格」という人にも、教科書くらいしか読んだことのない人にもおすすめである。