 | 暗黒グリム童話集 多和田 葉子 長野 まゆみ 穂村 弘 千早 茜 村田 喜代子 松浦 寿輝 酒井 駒子 宇野 亞喜良 及川 賢治(100%オレンジ) 田中 健太郎 牧野 千穂 ささめや ゆき 講談社 2017-03-29 Amazonで詳しく見る |
ダークよりのイラスト付き、大人のためのグリム童話オマージュ集。
手なし娘ってどんな話だっけ…という読者でも、あらすじ的なものが作中で語られるので安心。ヒロインはもはや妖怪だが、さばさばした雰囲気が魅力的だった。
端正な中に陰を孕んだイラストは本書で一番好みだった。
長野まゆみ・田中健太郎「あめふらし」
これは元になった話を知らなかったが（読んだが忘れたのかもしれない。いずれにせよ、記憶にない）とても素敵だった。ゾクゾクするグロテスク！妖しく美しい魔物！！ラストの現実的解釈(？)が蛇足に思えたくらい、童話の世界に耽溺した。機会があれば、原作にもあたってみたい。
松浦寿輝・及川賢治「BB/PP」
これは新解釈だけれど、私には楽しみどころがわからなかった。グロはイケる方なのだけど、唐突に過ぎて。ただ、男と女の間に横たわる埋めようの無い断絶を思った。
多和田葉子・牧野千穂「ヘンゼルとグレーテル」
子への虐待、夫婦のもつれた心情、ストーカーと被害女性などの今風なモチーフを原作に落とし込んでいる。ひたすら冷酷で残酷だが、本書の中では一番リアルでもある。
森の緑深さを思わせるイラストも素敵だった。
千早茜・宇野亞喜良「ラプンツェル」
アニメ化などであまりに有名な話だが、原話知らず…そもそも、読んだことがなかったかもしれない。
飼い馴らされることにNoを叫ぶ女性へのエールに思えた。
イラストは雰囲気があり、凛として美しかった。
穂村弘・ささめやゆき「赤ずきん」
ポップでどこか日本昔ばなし的空気をまとった赤ずきん。
狼に同情してきた私としては、ラストにニッコリ。