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中田永一「私は存在が空気」

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私は存在が空気私は存在が空気
中田永一

祥伝社 2015-12-11


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 主人公が全員異(or超)能力に関わる短編集。ちょっと「ドラえもん」に偏っているかな?

 まず、冒頭の「少年ジャンパー」がすごく良かった。いじめられっ子でブサイクでヒキコモリの良い子が、自分の超能力に気付き、それをフルに活用して人助けと恋までしちゃう。ほろ苦くもさわやかなラストも良。

 表題作は雰囲気が一変し、婦女暴行など陰鬱なシーンが出てきて、一気にバイオレンスに傾く。なぜこれが表題作なのだろう?ヒロインは「咲」のモモとか「色素薄子さん」に連なる能力で、あまり新味がないし…恋心に仕組まれたトリックだけは小気味よかったが、キャラに魅力は感じなかった。

「恋する交差点」訳の分からない物理現象により、引き裂かれるカップル。短い枚数で、必死なさと頑張りが伝わって来て、恋物語を大いに堪能できた。

「スモールライト・アドベンチャー」ドラえもんの道具がまんま出て来ると思ったら、オマージュ小説なのだとか。児童文学ならアリだろうけど、ご都合主義と予定調和のオン・パレードで意外性も全くなく、大人が読むにはちとツライ作品。

↑ドラえもんネタここまで
↓ここからはキングと岡本倫

「ファイアースターター湯川さん」木造アパートの管理人をしていた主人公のところへ、赤い髪の美女が越してくる。実は彼女は超能力者で…。
 本書において、「少年ジャンパー」と双璧をなす面白さなのが、コレ。湯川さんの明るくさっぱり謎めきぶりがとても素敵だ。純朴な管理人クンの過去と湯川さんの隠された経歴がつながるとき、すさまじいバトルが始まる。キングの小説まんまの能力なのだけれど、雪かきのシーンなどはほっこりして心和む。続編があったら読みたいくらいだった。

「サイキック人生」まんま、岡本倫「エルフェンリート」のディクロニウスみたいな能力持ちの少女の恋を描く短編。
 ちょっといろいろデキスギな展開であまり楽しめなかったのだが、ストーリーはともかくキャラが良い。のほほんとしたヒロインと、親類の妊婦さんとの何気ない会話が可愛くて好きだ。


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