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篠田節子「冬の光」

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冬の光冬の光
篠田 節子

文藝春秋 2015-11-11


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 長いこと、母以外の女と交際していた父が、お遍路の帰途に投身自殺をしたらしい。次女は、ふと父のたどった道のりをトレースしてみようと思い立つ…男の生き様物語。

 読みはじめてすぐ、アッー!私の超苦手な不倫ものか!!と思ったのだが、なんとか読了。400ページを越えるボリュームながら、私はこの本から楽しみを見出すことはできなかった(でもamazonレビューは絶賛なんだよな、謎)。この厚さでカタルシスゼロはちときついですよ???!!!

 まず思ったのが、次女のパートいらんやろ、と。不倫の恋を胸に秘めた父親に比べ、長女・次女・母のキャラはありふれていて造形が浅く、その短絡さ加減もあって感情移入が全くできない。

 リアルな肉付きをもって描かれている父親にしても、好きな女への想いはとても自己中心的、身勝手極まるもので、知識欲・肉欲的に都合の良いところどりな恋愛は、だからダメなんだよ!と、読んでいてストレスたまること請け合い。

 ゲバゲバ時代はともかく、お遍路編では(実在ではないんだろうけど)ショップや宿をdisったり、あんた何がしたいのヨ状態の父親。思いつきで地元に仁義も切らずに商売始めちゃったり、女を拾って突き放したりかまったりアレコレしたり(その上、別れはアッサリ)と、本を閉じるころにはこの男の死の謎などどうでもよくなっていた。だって魅力がないんだもん。
 妻とタイプの違う昔の女を想い続けるとかリアルかもしれないけど、還暦過ぎてこんなに行きあたりばったり人生なオヤジ、好きになれる要素がない。

 ラスト、死の真相がわかっても、ふーん、としか思えなかった。



p.s.心筋梗塞で死んだキャラが、手に箸と茶碗を持ったまま死後硬直しているシーンだけど、心筋梗塞って胸部の激痛に長ければ三十分は苦しむので、そんな弁慶の最期みたいな感じじゃないはずだが、どうなんだろう。いや、フィクションの事実と違うとこ指摘するのはヤボだとは思うのだけど、読んでいてちょっと気になった。


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