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飯野文彦「ゾンビ・アパート」

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ゾンビ・アパートゾンビ・アパート
飯野 文彦

河出書房新社 2015-05-24


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FKB饗宴7」でもそのすさまじい幻想顕現能力を見せつけた著者のホラー&SF短編集。
 
 古い作品から書き下ろしまで、著者のファンなら(というか、ホラー好きなら!)見逃せないラインナップとなっている。
 
 表題作は〈好奇心、ネコを殺す〉を地で行く話。ホラーらしい展開だけど、これはやりすぎでは…だって、愛する人を失った人間って無茶するでしょ。両親がこの後、おとなしく墓守を続けるとも思えないんだよね。

「襲名」クトゥルーアンソロへの寄稿らしく、グチョグチョのヌルヌルのドロドロでおぞましい。落語の展開に合わせて変わりゆく肉体が哀れでもあり、可笑しくもあり。

「深夜の舞踏会」恵まれた少年が初めて人生に挫折し、死のうとしたときの奇跡。いい話と思わせておいて、ラストシーンはショッキング。いや、グロくてもいい話ではあるんだけど。

「愛児のために」タイトルから「雨月物語」の「青頭巾」を連想したのだけれど、それよりもっとバイオレンスアクションにあふれていた…。

「やがて、空から」ゆるやかに、醜く人の世界が終わる。世界は一瞬で終わるのじゃなくて、こんな風にゆるゆるじわじわと絶えていくのじゃないかと常々思っているので、荒れ果てた世界に感情移入できた。ラスト、救済者の行動はちょっとうかつか。

「横恋慕」本書で最もエキサイティングな物語はコレだろう。奇想極まるというのか、もてざる男のしんねりむっつりな変態ぶりに驚愕。酸鼻を極めるシーン続出なのだが、それでいてラストは一抹の不安を残しつつも後味は良い。

「わたしはミミ」謎の女・ミミに夢中になるナオだが…子供にはこんな女、刺激が強すぎるっしょ。彼は或る意味、運命を自ら放棄したのだと思う。少し耐えていれば、また違った展開がありそうだったのにな。

「痴れ者」アルコール浸けの脳が見る夢はきっと、こんな感じだと思う。脳みそを拾うプロローグ以上にショッキングなことはなかったが、悲惨な待遇が、その一方で類まれなる快楽でもあるというのは恐ろしい。

「戻り人」おなじみ妖彦もの!実話系怪談としてもイケる、リアルな筆致にぞくぞく。

どの作品も、B級ホラー的チープ感満載ながら、人間のあさましさや悲しさ、たぎる想いもにじみ出ていてすごくイイ感じ。まだまだ眠れる(単行本未収録)短編があるとのことで、ぜひ続刊希望である。



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