![]() | 鬼談 (幽BOOKS) 京極 夏彦 KADOKAWA/角川書店 2015-04-04 Amazonで詳しく見る< |
鬼にまつわる短編集。とはいえ、虎皮ふんどしに二本角といった、昔話のようなオニが登場するわけではない。鬼とは死霊のことであったり、人の心に棲まう忌まわしい何かだったりするのだ。
雨月物語オマージュあり、掌編あり、会話劇ありとバリエーションに富んだ内容である。
私のお気に入りは、大昔の剣術師範代と現代の家族を呪いがつなぐショッキングな「鬼縁」、よくあるモチーフなれどただならぬ緊迫感を孕んだ「鬼慕」、記憶にない風景が不穏に過去を揺さぶる心霊もの「鬼景」。
とくに「鬼景」はすさまじい。怪異否定派で知られる著者だが、その手になる心霊は魅力的で、確かな存在感を持って読者に迫りくる。怖い話好きなら必読の一篇だ。