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ペインフリー体制が世界に敷かれ、人々は自由意思を失い偽りの笑顔を浮かべて暮らしていた。そんな体制を打破しようと、妹のキーハと共に立ち上がったガアダ(眼鏡理系美女)は、元彼のヴォグを仲間に引き入れようとするが…硬派なSFコミック。
私が最初この作品に出会ったのは、書店での雑誌アフタヌーン立ち読み時だった。ちょうどサービスエリアの回だったと思う。個性的な絵柄と、何より『半竜』であるキーハの異様なビジュアルに惹きつけられたのである。
私はそれまでのあらすじも知らず、キーハはたぶん「E.T.」のような異星人で、ヴォグとガアダ(たぶん超能力眼鏡美女、とそのときは思っていた)が母星に帰そうとして一緒に逃避行してあげてるんではないか、などとのんきな想像をしていたのだった。
いざコミックスの一巻を購入して読んでみれば、それはもうエキサイティングな物語で一気に作中に引き込まれた。
やはり、キーハのキャラがいい。最初ヴォグと会話しなかった理由など、カッコ良すぎて痺れてしまう。人間に絶望し、姉と共に竜になり世界を焼き払おうと考える異形の女性。なんとみりょK津駅名キャラクターであろうか。美女ガアダも主役(?)のヴォグをも喰ってしまうほどの、圧倒的な存在感がキーハにはあった。
難点は私にSFの素養がないせいもあり、概念や設定を理解するのが難しいということである。だが、そこは漫画なので、全部理解せずともなんとなく絵の雰囲気で読み進めることが可能である。
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1巻を読んだとき、これは絶対に2巻で収まるスケールの話ではないと感じたため、打ち切りだったら嫌だなあと思ったのだが、しっかりドラマが展開した上で完結している。
やはり、この作品の主人公はキーハだなあ(ヴォグもカッコ良かったけれども…)。とにかくキーハ素敵。二人が肩を並べて歩いて、ヴォグが軽口をたたくところなど、お気に入り過ぎてもう何度も繰り返し読んでしまった。
そして、本書の圧巻は竜同士の戦いである。一体で迎え撃つキーハが実に勇ましい。
驚きのラスト、ぜひ彼女には彼と幸せになってほしい(お姉さんとは破局したようだし…)というのは、難しいだろうか。
大満足の本書であるが、ただ、意識を混濁させている≒ゾンビ、という思考がどうも受け入れがたかった。本当にゾンビなら不可逆的に腐りゆくだけだが、PF(ペインフリー)管理下の人間は生きており、PFを切れば自由意思を持つ人間に戻れるようなのである。大儀のためとはいえ、それを殺してのけるのは(ヴォグのように、子供対象に限らずとも)心理的抵抗がもっと大きそうなものであるが…。
設定は伊藤計劃の小説がバックグラウンドとなっている模様なので、そちらも読んでみようと思う。