![]() | 無明行路 怪談真暗草子 (竹書房ホラー文庫) 久田樹生 竹書房 2012-07-28 Amazonで詳しく見る |
レストランやカフェで、人数よりも多くお冷が出てくる。そんなありふれた怪談が他の怪異とつながるとき、壮大な呪いの構図が見えてくる…怪談実話。
面白かった。ここに出てくる怪異は、ウェイトレスが水を多く出す・試着室で謎の影が出る・夢にいようなものが出るなど、一つひとつをとってみれば地味でよくあるネタばかりだ。それが、ルポ形式で人から人へ語り継がれることにより、錯綜する情報すらリアリティを加味していき、異様な緊迫感を出すことに成功している。
ラストの呪いの原因になった出来事すら、怪談ジャンルではしばしば見る理由なのだけれど、こうして人物を芋づる式にたどる構成が迫真性を生んでいると言える。個々の怪異には新味はなくとも、それらが意図を持って有機的につながるとき、滴は連なり大河となって読む者の胸に迫る。
読後、長編小説を読み終えたような、いい意味での重苦しい疲労感が残った。著者は「新耳袋」とも、「「超」怖い話」とも異なる独自の進化を遂げた怪談を見せてくれた。まだこういう手法があったのかと驚くとともに、今後の作品が本当に楽しみである。