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皆川博子「双頭のバビロン」

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双頭のバビロン双頭のバビロン
皆川 博子

東京創元社 2012-04-21


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 ハリウッド隆盛期に実力派監督として成り上がったゲオルクには、存在自体を封印された双子がいた。彼、ユリウスは引き取られた先で精神的実験をされ、ゲオルクの体験を幻視する。一方、ゲオルクもユリウスの心を感じとるようになり…シネマ・サスペンス。

 一方が傷を受けると、もう一方も痛みを感じるのがコルシカの双子なら、精神的つながりを持った双子は何と呼べばよいのだろう。
 骨太な映画界のしあがりストーリーに超自然現象がスパイスとなって絡み合い、複雑かつ豊かな味わいを醸し出している。

 一番印象に残ったのはツヴェンゲルで、ユリウスと彼が再会するシーンなどは、思わずほろりとしてしまいそう。

 男の孤独と友情を描く大作で、厚さが全く気にならないほどのリーダビリティを持つ物語だ。
 著者の作品にありがちな男色描写がプラトニックにとどまっているのもいい(ラスト、真相を読むとセックスどころではない、もっと鬼気迫るほどの濃厚な関係だったと気付くが…)。

 私が唯一気になったのは、やはり著者の作品によく見られるトランスべスタイトのシーン。身元がわからぬようウィーンに連れて行くだけなら、それこそサングラスや帽子で済むのであって、下着まで女ものを着用させる意味がわからない(ヴァルターの秘められた趣味?彼より、もう一度の方が話の展開上メインだとはいえ、少年の女装はばれそうなものだが…)。



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