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渡邊ダイスケ「善悪の屑」

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善悪の屑(1) (ヤングキングコミックス)善悪の屑(1) (ヤングキングコミックス)
渡邊ダイスケ

少年画報社 2014-07-14

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 とある古本屋で或る本を手に取るとき、それは復讐の合図…!

 悲しい過去を持つ二人の男が、裁かれない(もしくは量刑を逃れた)悪を潰しまくるサスペンス。

 

 ウェブでさんざん宣伝が出まくるので、抜粋されたコマの鬼気迫る表情に惹かれて読んでみた。

 

 古書店を経営する男と、彼に賛同するもう一人の男が依頼された復讐を淡々とこなしていくという内容だった。

 それだけ聞くと、弱気を助け外道を挫く平松伸二「ブラック・エンジェルズ」を思い出すが、本作の二人はブラックエンジェル達とは違い、依頼者から報酬を受け取るばかりか、殺し方がメチャクチャえぐいのである。結果的に死なせはするが、殺しよりも拷問に重きが置かれているくらいだ(★)。

 

 

 読んで気付くのは、各話それぞれ、対応する実在事件が存在することだ。それは露骨なまでにそっくりで、amazonでレビュアーが対応する実在事件を挙げているほど。

 

 おそらく、本作の狙いもそこなのだろう、と思った。少年犯罪や凶悪犯罪は、加害者の社会復帰が重視されるせいか、びっくりするほど軽い刑期で済んでしまうことが多い(★★)。そのような、大衆の不完全燃焼感をエンタメとして晴らすのが、こういう「必殺仕置人」のようなコミックなのだろう。

 

 復讐屋の過去もチラ見えして、続きが気になる作りである。絵に少し癖があるが、残虐シーンが苦手でなければオススメ(むしろ、残虐シーン好きにこそ…漫画は規制が大変なのでそのものズバリはないけれど、現代を舞台に拷問が真面目に描かれていて驚き)。

 絵が適度にマンガチックだからスイスイ読めるが、奥浩哉クラスの描写だったらエグすぎて通読できないかも…?

 

 

(★)殺さず、殺すよりも或る意味キツイかもしれないお仕置きをする話もある。 

(★★)実際の話、量刑が重いと出所した時の社会復帰が困難になって再犯率が高くなるそうで、できるだけ刑を軽くしたいという考えもあるようだ。ソースは森炎「刑罰はどのように決まるか」筑摩選書、2016。

 


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