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姫野カオルコ「謎の毒親」

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謎の毒親謎の毒親
姫野 カオルコ

新潮社 2015-11-20


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 実際に起きた出来事をもとにしたという、毒親小説。

 この著者の本、初読みであった。最近珍しい新規開拓。やはり、リアル毒親育ちとしては読んでおかないと、と思ったのだ。

 毒親育ちのヒロインが、年配になってから親との出来事を古い知人(…というには複雑な人間関係なのだけれど)に書簡で相談していくというスタイル。
 最初は〈日常の謎〉系なのな、と思って軽く読んでいたんだけれど、次第に言葉のDVが頻出してきて、読んでいて暗い気分になる。

 そして、中盤あたりから全くヒロインに共感できなくなった。やたら賢しらなんだもん。ハイソなセンスや専門的な知識を(さしたる理由もなく)ひけらかし、高尚な言葉遣いをするヒロイン…そして、アテクシ毒親育ちではございませんことよ、ただ謎なだけデスのよと言われても、なんだか無理して現実逃避しているようにしか見えないのである。
 ヒロインが好きになれないからカタルシスもないまま、モヤモヤと読み終えてしまった。
 一冊で判断するのは拙速だが、どうも著者の小説とは相性が良くない予感。

 

 以下、内容にふれるので未読の人はUターン推奨。



 一番謎だったのが、ヒロインがグレもしないのに、親殺害を企てた上、実行に移しかけるところ。
 こういう、親にエネルギーを吸い取られて飼い馴らされた子は、グレるバイタリティもないまま自傷行為や自殺に傾きがちなものだが、ヒロインにはそれがない。イイコだったのがいきなり、親を殺そう…なのである。
 自殺も他殺も、殺人衝動を自分に向けるか他人に向けるかの違いでしかないのだから、不思議でもないのかもしれないが…。

 似たような子供の意志を圧殺する親のいた私は、両親がそろって車ででかけた時、〈二人そろって事故って死んでくれないかな、そしたら自由になれるのに〉とよく空想したものだが、実際に行動に移そうとは思わなかった。なぜなら親を殺すより、自分が消えてしまいたかったからだ。世界を殺すか自分を殺すかだったら、迷わず自分を殺そうと思った。今私が生きているのは、幾つかの偶然の重なり合いにすぎない。

 親の不条理に耐えてきたヒロインが、自分ではなく親に殺意を持った…そこで、私にとってヒロインは理解不能なモンスターになってしまった。

 そんなわけで、私には生理的に無理な一冊であった。


p.s.虫屋敷とか、中華料理店のエピソードは良かったのだがなあ。
 正直、自分がなぜこんなにこのヒロインに嫌悪感を抱くのか、自分でもよくわからない。


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