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東野圭吾「人魚の眠る家」

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人魚の眠る家人魚の眠る家
東野 圭吾

幻冬舎 2015-11-18


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 娘がプール事故で脳死らしいと言われた母・薫子は、ひたすら娘の面倒を見ることにするが…。 
 
 読むうちにだんだんと、〈娘のため〉と言いながら悪ふざけのような行為におよぶ薫子に共感できなくなっていく。どちらかといえば、薫子と折り合いの悪い父親の方に同情してしまう。出だしのように薫子のよろめきドラマだったらどうしようと思ったのだけれど、脳死判定と臓器移植というデリケートなテーマに真っ向から挑んだ意欲作だと感じた…途中までは。

 脳死判定から臓器移植までの流れが、生着率をアップさせるために仕方ないこととはいえ、悲嘆のさなかにある家族に残酷な決断をせまる、その不条理を描き出した点で本作を評価したいと思った…のだが。
 ページ数の制約なのか、〈その日〉は母親からのトンデモな提案でもたらされる。ここまでせっかくリアリティを重んじてきたのだから、このようなラストはげんなりしてしまう。娘の真の意志はどこへやら、これでは母親のエゴ、自己満足だけではないか。

 重いテーマを読みやすくわかりやすく扱いながら、ヒロイン薫子のエキセントリックさが際立ち、読後感の良くない一冊であった。

 本書にも出て来る横隔膜PMについてはこちらをぜひお読みいただきたい。
巻子の言霊 愛と命を紡いだ、ある夫婦の物語 (現代プレミアブック)
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