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渋川紀秀・真白圭・葛西俊和「怪談実話競作集 怨呪」

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怪談実話競作集 怨呪 (竹書房文庫)怪談実話競作集 怨呪 (竹書房文庫)
渋川 紀秀 他

竹書房 2015-07-29


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 三人の書き手が競作した一冊。それなりにボリュームがあると、書き手それぞれの特性が見えて来て興味深い。

 TOPバッターは真白圭。
 とにかく、文章が巧みで状況が頭に絵として浮かびやすい。
 類話があるにせよ、「綿菓子」の奇怪なビジュアル、「銀のハイヒール」の徐々に盛り上がって行く呪いには魅力を覚えた。
 怪談実話コンテスト「痕跡」に収録されているとのことだが、その本が家のどこに埋もれているかわからず(林立する本の柱のどこかにはあるはずだが)再読できない。どの話だっただろうか。

 次鋒の渋川紀秀は、「FKB怪談幽戯」が初読だったが、本書では前回より硬さが取れて読みやすくなったような気がする。
 心霊かサイコか「長年の苦情」がサスペンスタッチで楽しかった。

 トリを飾る葛西俊和は本書がデビューとは信じられぬほど滑らかな文章で非常に読みやすい。
 ほほえましい「運の糸」、出だしが私の集めた話と同じでドキドキした(オチは違っていた)「見返り」が印象的だった。


 全体として新人らしからぬクオリティで、けしてamazonで☆1が付くような本ではないと思う。
 ただ、ブーメランを承知で苦言を呈すると、〈よくできた本だが、新味がない〉か。要所要所で新ネタは出ているが、大筋がかつてあったクラシックな怪談と似ているために、既視感を覚えてしまうのである(もったいない)。
 昨今の怪談界には名だたる書き手が唸る程おられるので、その中でこの新人はちと違う!というか、新鮮味を感じられたらな…というのは読者のわがままだろうか。


p.s.「呪怨」だと思いこんでいて、うっかりそう書いてしまうところだった。確認して良かった。カバーを外すと、意外な怪異があるよ(ヒント 一文字消える)。

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