![]() | 山怪 山人が語る不思議な話 田中康弘 山と渓谷社 2015-06-06 Amazonで詳しく見る |
丹念な取材によりあらわとなった、山の怪異集。
読む前は安曇潤平系の山怪談なのかなぁと思っていたけれど、これは松谷みよ子「現代民話考」に連なる仕事であった(★実際に、本書には「現代民話考」とかぶっている話も散見されるくらい。聞き書きだものな)。
まず、しょっぱなの話からぐっとくる。なにしろ、キツネが「ベロベロベロベロと光る」のだ。〈ピカピカ〉〈キラキラ〉ではないのである。この、「ベロ×4」というのは、まさしく体験した人しか表現しえない擬音だと思う。
私のお気に入りを下記に。
「白銀の怪物」害されないのなら一度見てみたいほど、その存在が魅力的。
「不死身の白虎」神か、妖怪か…美しい。
「来たのは誰だ」誰も姿を見てはいないので音だけの地味な怪異なれど、しみじみと恐ろしい。霊というより●狗っぽい印象。
「もう一人いる」これは、その立場になったらおぞましくてたまらない。しんがりの恐怖はどれほどだろうか。
「鶴岡市朝地区」世にも珍しい、動物のゾンビ譚がステキすぎる。
(★)現代民話考〈1〉河童・天狗・神かくし (ちくま文庫)

日本の民話・都市伝説をジャンルごとに書き留めた偉大なる記録。絶版入手困難ゆえ古書価格は高騰している。私もなんとか1-8までは、ちくま文庫版でそろえたが、9・10・11・12は入手できていない。定価+送料程度で9,10,11,12のいずれか譲ってくださる方、ぜひアメーバメール等にてご連絡ください。