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ネットパトロール会社でバイトする大学生の孝太郎は、指ビルと呼ばれる殺人鬼の情報を追ううち、動くガーゴイル像の謎に行きあたる。そのガーゴイル像には、実は…社会派ファンタジー。
「英雄の書」と世界観いっしょなので、共通の登場人物が出て来るから読みたい人はそちらから読んだ方がいいかも。
評価の定まった作家さんだから書いてしまうけれど、本書は感心しなかった。誰も感情移入できる登場人物がいないし、ストーリーにもノれずに終わってしまったのだ。そんなわけで、800p越え読むのはつらかった。
だいたい、本筋に入るまでが長いのである。まあ、確かに導入部も先への布石ではあるのだが、ちと冗長に感じてしまう。
普通の現実寄りミステリっぽく始まるので、事前情報なしに読み始めた人は途中で荒唐無稽になってズッコケたのではなかろうか。私はラノベも好きなくらいなんだが、本書はファンタジーとしても華がなく、つまらなく思える(今の社会の重苦しさを反映しているから、仕方ないのか???)。
主人公である孝太郎が大事な人を亡くす場面も不思議なほど淡々としている。主人公はガラに関わったことで自分が変わったのかと悩むが、それより大事な人が亡くなって数日にもかかわらず、落ち込む主人公に立ち直れと食ってかかる妹の方が、頭がどうかしていると思う。
そもそも、ガラはなぜ、そんな目立つ場所で擬態する必要があったのか。どうして(ろくな欲望のありそうにない)老婆や幼女を脅したのか。彼女が必要とするパワーが、そんな下らないものから搾取可能な設定は残念だった。
あと、重箱つつきになるが「揶揄」という言葉が多用され、何か仕掛けがあるのかと思ったらなかった(少なくとも私には見いだせなかった)のもシラケる。
それにしても、本書といい「荒神」といい、いまいち楽しめないのはどうしたことだろう。「霊験お初」の頃は、あんなにもワクワクしていたのに。著者の作風が変わってしまったのか、私の内面が変わったのだろうか…。
p.s.重瞳は聖人の特徴だから、ガラのが片方なのは、オーゾと分けているのかも?
「英雄の書」も合わなかったし、どうかなと思ったらやはり合わなかった。言葉と、それによって紡がれた物語を扱うファンタジーは↓こちら↓がすごく面白かったので、比較すると「悲嘆の門」の評価を辛くせざるを得ない。
文学刑事サーズデイ・ネクスト〈1〉ジェイン・エアを探せ! (ヴィレッジブックス)
