![]() | 贖罪 読売新聞社会部 中央公論新社 2011-12-09 Amazonで詳しく見る |
罪を償うということの意味を、丹念な取材から書き起こすノンフィクション。
新聞連載をまとめたものだが、再犯率の多さにとても重く暗い気分になる。刑務所が単なる作業所、肉体労働所で終わったら贖罪にはならないではないか。
事件当事者になったことのない自分は、凄惨な事件の報道をニュースで見るたびに眉をひそめ、犯人が捕まったと知っては安堵し、裁判で重い判決が出れば社会から隔離されたと思って安心し、忘れていた。だが、無期懲役でも一生死ぬまで刑務所に入っているわけではなく、十年前後で出所することになるのである。死刑で生を断ち切られる場合を除き、出所後も人生は続くのだ。
出所後も欲望に負けて、またはなおも続く社会的制裁(犯罪者というレッテル貼り)に対する絶望から再犯する人々が絶えないという。再犯してしまう人と、しないでいられる人の違いは何なのか。生まれ持っての性質もあろうが、本書では人の絆に焦点をあてている。刑務官や保護司、ボランティアや知人友人家族など、人と信頼関係を築くことによって、犯罪の誘惑を遠ざけることができるのである。
きめ細やかに受刑者の心を見て行く刑務所の存在もあり、そういう人々がストッパーとなって再犯を止めているのだろうと思った。全施設で行うのはたいへん難しいことと思うが、そんな働きが増えてほしいと思う。
また、海外での再犯防止への取り組みも書かれており、興味深い。
本書で最も感心したのは、加害者中心ながらも被害者への視点を揺るがず持ち続けていること。心情的にも納得しうる内容のノンフィクションであった。