![]() | 夢幻花(むげんばな) 東野 圭吾 PHP研究所 2013-04-18 Amazonで詳しく見る |
通り魔に襲われる家族のシーンから、朝顔市で出会った少年少女の淡い恋を経て、舞台は一転、現代へ。迷える男と迷える女は手を取り合って事件を解決するのだった。
祖父を殺害された女性がキーマンに会うとき、謎は全て解かれる。無駄な記述はなく、その全てが必要な伏線だったのだと知るとき、ベテランのミステリ作家の企みに気付かされるのだ。大がかりなトリックがあるわけではないが、青年の成長物語として地味に感動的。
そして、この著者ならではの、現実世界への意見が盛り込まれていて興味深い。
大震災以後、震災の存在をなかったことにする小説と、震災に心痛めるあまりフィクションに昇華できていない小説が目立ったが、これは現実をストレートに見据えて答えを出している。主役の一人が出した結論は、日本に今を生きる我々一人一人が胸に刻まなければならない言葉でもある。