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三崎亜記「逆回りのお散歩」

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逆回りのお散歩逆回りのお散歩
三崎 亜記

集英社 2012-11-26


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 表題作は、とある町同士の合併にまつわる陰謀を、知らずしてその渦中にいた女性の目から描く。

 ポスト3.11らしい作品だなと思う。描かれているのはいつも通りの人を食ったような奇想ではなく、いかにも現実にありそうな事象だ。
 とくに、推進派が反対派を極端化させて大衆の無関心を呼んだり、幼い人らに一方的な知識を吹き込んだりするのは、アレの手口と同じである。

 ヒロインはふらふら迷いすぎな気もするし(でも仕方ない、彼女は作者に選ばれた、おバカな一般大衆の代表なのだから!)の前でやたらと重要人物が馬脚を表すなあ…という都合良さはあるものの、現代社会を批判し、希望を提示してみせる社会派な作品。


 併録の「戦争研修」は「となり町戦争」の世界に連なる話らしい。らしい、というのは著者のデビュー作をかつて読んだけれど、あまり気に入らなかったので、詳細を忘れてしまったのだ。

 戦争が町おこしに使われるなど、言葉の意味概念を揺らがせる、なんともムズムズする世界はいつものこの著者らしい雰囲気だった。




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