Quantcast
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2027

小川洋子「ことり」

Image may be NSFW.
Clik here to view.
ことり
ことりImage may be NSFW.
Clik here to view.

小川 洋子

朝日新聞出版 2012-11-07


Amazonで詳しく見る

 憑かれるが如く小鳥を愛した兄弟の一生。

 物語は、小鳥の小父さんと呼ばれていた老人の死から始まる。ここでまず、小さな違和感が(#)。

 ポーポー語なる特殊なオリジナル言語で話す兄弟を描く前半は、他者を拒む濃密すぎる空間に、読者として入り込めなかった。
 だが、優れながらにして欠落していた兄を失ってから、物語に迫力が出てくる。兄の思い出に呪縛された弟の孤独がしみじみと迫ってくるのだ。

 どうにもならない、主人公の恋心にはドキドキした。年の差、思い込み、一方的な想いと、どれをとっても破局にしか通じない道である。そばにいながら触れられない乙女など、まるで籠の中の小鳥のようではないか!

 最初から告知されていたラストなどは、近年騒がれる無縁社会そのもので、なんとも言えぬ寂寥感があった。



(#)細かなことだが、飼い主が腐敗の始まった状態で発見されているのに、小鳥は元気にさえずっている。新聞がたまっていることから、死後二、三日は過ぎていそうである。
飼ったことのある人ならわかると思うが、小鳥は飢餓に弱く、一日絶食しただけで死んでしまう。となると、よほど老人が餌をたんまり入れてあったのか?と、少し気になってしまうのだった…。

p.s.終盤、「鳴き合わせ」がなぜ問題なのかについては、こちらのノンフィクションがすごい迫力なので、あわせて読むのをおすすめする。

野鳥売買 メジロたちの悲劇 (講談社プラスアルファ新書)
Image may be NSFW.
Clik here to view.
野鳥売買 メジロたちの悲劇 (講談社プラスアルファ新書)
Image may be NSFW.
Clik here to view.





Viewing all articles
Browse latest Browse all 2027

Trending Articles