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平山夢明「暗くて静かでロックな娘」

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暗くて静かでロックな娘暗くて静かでロックな娘
平山 夢明

集英社 2012-12-14


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 人間の生を描く、とてつもなく汚くてこの上なく美しい短編集。

「日本人じゃねえなら」酒と賭け事が欠かせない、絵に描いたような駄目人間の『俺』は、ふと人の優しさに触れ
…。
 しょっぱなから、これはなんという話なんだろう。悲しくて、切なくて、感動を表す言葉が私には見つからない。

「サブとタミエ」彼女に心変わりを予告された青年は、あわてふためき関係の修復を謀る。
 純情ボーイの奮闘が楽しい。たどりつく先が、本当に読めない物語だ。

「兄弟船」とりえのない市三は、兄の市彦を羨んでいたが…。
 トカジ言うところの激安人生を行く一家だが、どこか暖かい。そして、駄目人間はどこまでも駄目道をゆくのであった。

「悪口漫才」人を轢いたカホルは、成り行きから死体を隠してしまう。
 奇妙なテンションに、手に汗握る物語。凄惨なラストも不思議なカタルシスをもたらしてくれる。生こそが地獄なはら、死は…。

「ドブロク焼場」火葬場に勤めながら、お笑い芸人を目指す二人の男。
悲劇と喜劇は紙一重というが、全て失った後に明るい希望残る、素敵な味わい。それでも、人生は続くのだ。

「反吐が出るよなお前だけれど……」罵りあいながらラーメンを作る老夫婦。そんな店に雇われてしまった男が見た、愛憎グルメの行く末とは。
 罵詈雑言の嵐でグロとゲロが入り乱れながらも、とても優しい物語。好き♪

「人形の家」パチンコ狂いの男が得た幸せ。だが、女にはある問題が…。
 凄惨な暴力もあるが、底を流れる人情があたたかい。欠落を抱えて生きる二人が健気でたまらない。

「チョ松と散歩」煙突の爆破を見に行く少年たちだが、実は…。
 チョ松の願いと、『俺』の想いがせつない。その後、『俺』が忠告を覚えていられるかどうかが、すごく気になる!!

「おばけの子」虐待を受け続ける少女の哀しき物語。
 親とも呼べぬ存在が最悪なのには間違いないが、周囲の移り気、無関心におぞけを感じる。

表題作は、場末の酒場で変わった女に出逢い、男は彼女に惚れこむが…。
 これまた、衝撃的で、儚くて美しくて、たいへんもの悲しいストーリーだ。

 著者の小説はいつも主人公がダークな魅力を持っているが、本書も悲しみを湛えつつ生き抜く男たちをつぶさに描いてみせてくれる。
 読了後、しばし放心するようなショッキングな展開、深く記憶に染み入るキャラクター、生々しく語られる生と死。口当たりがいいだけの小説に飽き飽きした人にこそ薦めたい、本物の物語がここにある。





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