![]() | 帝王、死すべし 折原 一 講談社 2011-11-09 Amazonで詳しく見る |
原田実は、息子・輝久の日記を盗み読み、いじめを受けていると知る。しかも、息子は殺人犯『てるくはのる』に傾倒し、学校で事件を起こそうとしているらしく…サスペンス・ミステリー。
毎回読者に“どんでん返しはどこだろう?”と予測されて読まれることはどんなにハードルが高いことだろう。しかし、本書にもサプライズは健在。
父の仕事は見当がついてはいたが、構えて読んでもこのラストは予想できなかった。少し唐突な印象すら残ったが、息子の精神力に完敗である。
ただ、「追悼者」が東電OLを色濃く借景していたように、本作にも現実の事件が噛んでくる。私個人としては、現実の事件をヒントとするのはアリだと思うけれど、似すぎているのは嫌なのね。湊かなえ「夜行観覧車」もオチでげんなりして新作読むのやめたし。
本書の『てるくはのる』は別の言葉でもいけたのじゃ、ないかなと。何度も呪文のように言葉遊びが繰り返されて、それが異様なムードを高めてはいるのだけれど、そこんとこは完全創作(*)でもイケたのじゃないかと思うのであった。
(*)道尾秀介「背の眼」の、「レエ、オグロアラダ、ロゴ」みたいに。