![]() | 廃墟の怖い話 (宝島社文庫) 風羽 洸海 裂田 伊織 佐野 和哉 久保田 一樹 禾 悠井 すみれ 宝島社 2018-06-06 Amazonで詳しく見る |
小説家になろうサイトのホラージャンルから飛び出した、廃墟しばりの競作集。
残酷でやるせない味わいの作品が揃っているが、廃墟をテーマにしているためか、すべてではないがトーンの似通っている作品が目立つような…(廃墟で人外とおっかけっこ、鏡と怪異など)。悪く言うならば設定・ガジェットかぶり、良くとらえるならイメージ・世界観が統一されたアンソロジーといえる。
収録作の感想を下記に。
・首をはねられた君とすり潰された僕 久保田一樹
刺激的なタイトルに興味ひかれた。怪異めいた噂がリアリスティックに推理されてゆく様は痛快だが、オチは定石に過ぎて、途中で読めてしまう。年のいった読者ならばモデルとなった現実の事故が思い浮かぶことだろう。
・「ありがとう」風羽洸海
読後、タイトルの嫌な重みが胸に残る。謎を提示するつかみは巧いが、少し説明しすぎな気も…?
・鬼ごっこ 禾
王道でストレートなB級ホラー…だが、それがいい。描写に臨場感があり、実際に廃墟を訪れているような感覚が楽しかった。蹂躙される善意が哀れ。
・お前は誰だ 裂田伊織
前半のラノベ調と、後半のホラー調のギャップに戸惑う。個人的な好みからすると、後半だけで良かったかも?
・知っている 風羽洸海
暗がりにひそむ秘密、少女の忌まわしい記憶。やはり、つかみが抜群。スーパーナチュラルな現象が多発する本書において、現実でもあり得そうなストーリーが印象的だった。
・タクシー運転手のヨシダさん 佐野和哉
怪談ジャンキー的に待ってました!!的な実話怪談調の連作。こちらも謎が最初に提示されていて先が気になる。前半は稲川風リアル怪談で擬音多め、オーソドックスな内容だが、幻想味強まる後半はほろ苦い余韻が残る。中でもその4「死を呼ぶ影」のダークな雰囲気が好みだった。
作品とは関係ないがこの作家さんの小説家になろうページ番号は912998で、食い肉クッパ と覚えると覚えやすいな、などと思った。
・合わせ鏡の双子の呪い 悠井すみれ
流れるように恐怖に突き落とす、自然な展開が巧い。怪異が怖いと思わせて実は人間の方が、いややはり怪異が…と、めくるめく展開が楽しかった。ラストはビターだが、納得できるエンドで良。