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黒木あるじ「怪談実話 終」

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怪談実話 終 (竹書房文庫)怪談実話 終 (竹書房文庫)
黒木 あるじ

竹書房 2017-05-29
1023

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 いま怪談実話といえば、真っ先に名前が上がるであろう著者の最新作。

 読みやすく磨き抜かれた文体が、するりと読者を日常から怪異の真っ只中に突き落とす。黒木怪談において、彼岸と此岸の境界は実にシームレスでナチュラルなものだ。
 超新星の如きデビュー以来、マシンガンのように黒木作品は休むことなく紡がれてきた。
 その、あまりの多作ぶりに内容の真贋を疑う声がネットに見られたこともあったが、なに、駆け出し兼業の私ですら、2冊+アルファの実話が集められたのである。斯界の旗手に話が集まらないはずがない。
 もしも奇妙な体験をしたならば、当代随一の書き手に預けたいとは誰しもが思うことであろう。私とて、何度みずからヒィヒィ書くよりも、黒木先生や松村先生にお手紙して提供してしまいたいと思ったことか。

 一応のシリーズラストとなる本作、そこにはいつもの黒木節があった。小難しい言葉などなくして、加不足なく状況が目に浮かぶ、研ぎすまされた描写。
 新味(これが一番難しい)あるネタ。どんでん返し。無惨モノ。ユーモア。怪談に望まれる内容いっさいがっさいが、その中にはあった。

 初期こそ師・平山夢明御大の影響が濃厚にあったものの、この数年は黒木節としか言いようのない、圧倒的なリーダビリティの文体が輝いていた。

 怪談であれ小説またはトークや映像であれ、新たなる黒木作品に出逢える日を
読者として心待ちにしている。


 想いの丈を書くばかりで、本書の内容に触れるのを忘れるところだった。お気に入りを下記に。

「母電」いい話と思いきや、不条理に突き落とされる。
「浜円」不気味に美しい超自然現象。
「風習」いったいなにが発端だったのか、想像広がる。
「暴霊」実際に遭ったら、これが一番迷惑かも?
「終宿」現代には、こんな場所も必要なのでは。
「数奇」奇妙で忘れがたい印象を残す。
「実話」リンクがスリリング。



 

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