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我孫子武丸「裁く眼」

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裁く眼裁く眼
我孫子 武丸

文藝春秋 2016-08-30

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 絵は超絶巧いのに、マンガ家としては鳴かず飛ばずの鉄雄は、似顔絵書きの画力を見込まれ、テレビ番組のために法廷画を描くことに。

 ところが、彼は被告の美女に惹かれてしまい…?法廷画サスペンス。

 

 ああ、何なのだろう。意外な犯人もわかった。動機もそれなりだった。なのになぜ、カタルシスはないのだろう。

 

 それは、本書が現実を舞台に始まりつつも、鉄雄がスーパーナチュラルな能力を発揮するからではなかろうか。しかも、それがとある身体障●でないとわからないというのだから、どうも素直に楽しく読めないと言おうか、もやもやしてしまう。

 個人的な好みだが、ミステリーには超現実要素が入らない方が好きだし、入るのであれば最初の方でそういう世界観であると提示してほしかった気がする。

 

 超能力ではなくとも、直感像記憶者でもある鉄雄の観察眼が素晴らしすぎるという風に、現実よりの解釈もできるのだが…。

 新味のある題材だけに、ミステリアスな被告の本質が明かされぬままだったことも、やや残念に思った。

 

p.s.カバー画なのだけど、これは主人公・鉄雄の絵には見えない。なぜなら、普通のスケッチだからだ。鉄雄は漫画家の中でも上から数えた方が早いくらい巧いのだから、もっともっと、手でどうやって描いたのかも想像がつかないくらいの巧さでなければ、鉄雄の絵だとは思えない。アンドリュ^・ワイエスくらいの巧さを想像したので、そこは〈ん?〉と思った。


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