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三崎亜記「ニセモノの妻」

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ニセモノの妻ニセモノの妻
三崎 亜記

新潮社 2016-04-22

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 日常から地続きのようでいて、ちょっと変わった世界に連れて行かれる…摩訶不思議な短編集。

 最初に世界の設定が説明されている話と、日常から始まって徐々に何かがおかしいと気付かせていく話があるが、後者の方がぞくぞくして好みだった。

 

「終の筈の住処」

 マンションを買ってしまってから、周囲の住民の建設反対に気付いた主人公ら夫婦。

 この著者だから、こんなありふれた舞台も普通の物語になるわけもなく、読者の心はもやもやした不安に包まれていく。その不快さこそが心地よい小説の力なのだと感じる。

 

 表題作は、タイトルに偽りなくニセモノの妻の話である。途中まではとてもスリリングだが、不安と諦念入り混じったラストは好みが分かれそう。

 

「坂」

 坂ブームの夫婦は、坂ゆえの抗争に巻き込まれてゆく。

 著者の面目躍如といったところで、坂をめぐって争う、珍妙な思想の人々のあれこれがとても楽しい…と思ったが、抗争が淡々と続くので、短編ながら半ばで倦んでしまった。怪談が出て来てからは、また盛り返してくれて、ラストは快かったと思う。

 

「断層」

 本書の白眉と言っていいだろう、ラブリーで悲しくせつない小説。私はこれが一番好きだった。というか、ここまで読んだ〈うーん、いつものミサキアキ作品で、フツーに楽しいけど取り立ててすごいというほどでもないなー〉という感想を粉々に打ち砕き、ワクワクさせて心震わせてくれたのはこの作品があったからだ。全てのカップルに強くおすすめ。

 

p.s.「断層」のオチ、結局HAPPYってことでいいの?ねぇ?!

 


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