![]() | 人生教習所 (2011-09-30T00:00:00.000) 垣根 涼介 中央公論新社 2011-09-30 Amazonで詳しく見る |
父島・母島で人生セミナーが開催され、テストに合格した者には就職が斡旋されるという。東大生ながら不登校の太郎、元暴力団の柏木、わけあり老人の竹崎、デブで根暗な由香たちは人生を変えようとセミナーに参加するが…。
最近しょっぱなから事件が起きる、ノンフィクションやラノベを主に読んでいたんで、あー一般小説って始まりがゆっくり、ゆっくりだったんだなーと実感した。
柏木がとにかくかわいらしく、こうした昔突っ張ってたけど実は純な男を描いたらピカイチな作家だと改めて思った。「月は怒らない」の梶原も、めっちゃラブリーだったしなあ。
柏木が魅力的だからこそ、後半の何ら盛り上がりのない、ヤマのない展開は残念だった。
唯一の事件といえば、性行為に及びかけた男女がいたことくらいだが、事故のような衝動に身を任せた結果だからロマンもへちまもない。また、女性側からの描写にも疑問がある。何が疑問かわからない方は、吉田秋生の漫画「吉祥天女」を読んでみていただきたい。破瓜の血は毎月のものとは違い格別と言いたいのかもしれないが、それにしても釈然としない。
よくわからない理由で突如発情する登場人物(十九、二十歳の若さでもあるまいに…)もがっかりだが、ラストにもがっかりだったのである。
島の特異な歴史はよく調べられているが、物語のセミナーがここで開かれた理由が腑に落ちない。東大生の口からそれらしき理由が語られはするが、青二才ならばともかく、異文化交流の歴史に触れるだけだとしたら、この島である理由は弱いと思う。なぜここで高価なセミナーが開かれなければならなかったのか、納得できるだけの理由が見えてこない。
なんとなく始まり、なんとなく終わった、なんだかすっきりしない物語だった。