 | クラゲの記憶 (新風舎文庫) 杉山 未来 新風舎 2005-03 Amazonで詳しく見る |
彼氏と別れるたびに穴を掘り、思い出を葬る女の愉しみは、飼育するクラゲを眺めることだった…サイコサスペンス。
惜しい、というのが読後の印象。文章がなんだか、そっけないのである。著者が理系の人だからなのかどうかは知らないが、論文のように事実を端的に伝える言葉でつづられているので、物語のキモである『隠したいこと』が、言葉足らずなために浮き上がってしまうのだ。
ここをもっと美文で幻惑できたなら、純文学になり得たと思った。
オチは少し安易に感じる。諸星大二郎「栞と紙魚子」の某話みたいな展開かと思いきや（だってクラゲは大切に飼育しても長くはもたないって言うから…腐乱するんだと思うじゃん）、真相はもっとストレートだったので、或る意味サプライズではあった。