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「恐怖箱 百眼」

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恐怖箱 百眼 (竹書房文庫)恐怖箱 百眼 (竹書房文庫)
加藤 一 神沼 三平太 高田 公太 ねこや堂

竹書房 2014-07-29


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 一冊に百話、ドドーンと短い怪談が詰め込まれた百物語本である。
 一話わずか1-3pほど、必ずしも因果を伴わず怪異が現れては消えていく。尺が短いので、怪異のビジュアルが印象的な話が、読後の記憶に残っていく。
 買ってから家の中で行方不明だった時期があったりもして、見つかってからも少しずつ読んだため、読了が思いのほか遅くなり、この日までずれこんでしまった。

 それでは、本編の感想をば。

加藤一「検証実験とその成果について」誰でも経験するであろう金縛りの話と思いきや、落ちのヒネリにひんやり。

神沼三平太「太鼓」しみじみとしみいる、人情系の良い話。
「浜より見下ろす」あり得ない状況が鮮やかに脳裏に浮かんだ。
「古着」理由のわからなさが、通り魔的で怖い!
「七人目」よくあるパターンではあるけれど、じっとりとした空気感が良かった。
「電気ポット」世にも不気味なビジュアルがいい。
「箒木」こういう外国怪談は貴重と思う。
「エレベーター」著者には「臨怪」からほのぼの系怪談のイメージを持っていたが、それを覆したのは重く苦い読み味の「崩怪」だった。これも「崩怪」系の残酷譚で、ライトなのもいいけれど、どちらかといえば無惨路線の方が私には魅力的に感じられる。

高田公太「劇場」ビジュアル的にグッとくる怪異。
「ダンボール」「上手な絵」どちらも絵画の怪がテーマだが、それぞれ味わいがあって好みだった。
「妹」父の言葉に、じーんとしますな。
「おかえり」哀しく、そして生きている人の方が怖いかもしれない話。
「結婚式の様子」ラスト、友人の言葉が意味深。

ねこや堂「無垢な幽霊」怪談には珍しい、優しく暖かい話。
「アロマテラピー」こういう怪異、案外厄介かもしれない。
「アドバルーン」妖怪ちっくで素敵。
「釣りをする人」気付いてからがスリリング!

 そして、本編より或る意味怖いと思わされたのが、著者あとがき。
 とくに「その眼を以て百のあわひを覗くべし」には戦慄。「池袋で起きた怪異」連作の発表が(フキンシンかもしれないが)楽しみでならない。

 

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