![]() | 幻影怪談(仮) (竹書房文庫) 明神 ちさと 竹書房 2014-02-28 Amazonで詳しく見る |
BAR幻影城の城主であった著者ならでは、ワールドワイドでバラエティに富んだ怪談が楽しめる。
アブない霊や霊より怖い(かもしれない)生きた人の話が混然とたゆたう様子は、平山夢明・著の「「超」怖い話」と「東京伝説」をブレンドしたかのようなテイストでもある。
そのペダンティックな側面もさることながら、類書にはない特徴は、著者が深い考察により、怪異そのものや体験者の思いにまで切り込んでいくところにある。著者のキャラが立っている、と言ってもいい。
著者色が強く出ている点は好みが分かれそうではあるが、新たなる怪談形式の1ページが開かれたように感じる。
私好みの話を列挙すると、まず「道祖神の小径」。「異域」のサブタイトルぴったりの話で、人里ならぬ山の怖さが存分に味わえる。
それから、「狂気」のサブタイトルを冠する「チチノヘヤ ハハノヘヤ」。私は乙一「ZOO」収録の「SEVEN ROOMS」のような残酷譚が大好きなので、この話は直球でとてもタマらない(不学ゆえ「猿夢」は知らなかった)。
サブタイトル「時計」の「黒の巣」は不可思議感覚に浮遊するも良し、サブタイトル「鳥」の「七つの子」の不気味さに戦慄するも良し。
サブタイトル「庭」の「沈め雛」は這い寄る恐怖を活写しているし、夢のあるサブタイトル「UMA」の「巨大貝の島」はリアルと浪漫が融合して面白い。
早くも著者続刊に期待大である。